雛人形の最も大切な部分「顔」の印象は髪型で決まります
女性のファッションで気になるのは、いろいろなポイントがあると思いますが、服装やお化粧、髪型が大事なポイントとなっているようです。雛人形も同じように、特にお顔の印象・表情とともに髪型によっても印象が変わってきます。
雛人形のお姫様の髪型は、大きく二つにわけることができます。一つは平安時代から伝わる「下げ髪」、別名「割り毛」と呼ばれるものです。もう一つは江戸時代からの「大垂髪」(おすべらかし)と呼ばれるものです。平安時代の女性たちの髪の毛の長さは、身長ほどのばしていたため、管理が大変で、洗髪休暇もあるほどで、また長い髪の毛は戦争中の逃走に不向きで髪の毛をつかまれ捕虜になってしまうことがあったようです。
いずれも「髪付け師」と呼ばれる職人さんによって仕上げられ、その技は、10年以上の修業を積んだ熟練した職人さん達によってのみ作られます。乱れた髪のお人形は、印象が悪く顔のイメージも良い物とは言えません。
最近では、人形のお顔が白い顔ばかりではなく、人間と同じように肌感覚の色味を付けた物もあります。そのお顔の印象を更によく見せてくれるのが髪型であると言えるでしょう。顔の印象は髪型で決まるといっても過言ではありません。
雛人形の髪型「大垂髪(おすべらかし)」と「下げ髪」
令和の新年号となり、新天皇の即位の礼が執り行われた際、皇后様(雅子様)の髪型を見た方々も多いと思われます。美しく雅やかなその時の髪型が、「大垂髪(おすべらかし)」と言われ、現在の雛人形のほとんどで使用されており、現在の雛人形の一般的な髪型として親しまれています。また、人の髪型としては江戸時代の頃から特に用いられた髪型です。
こちらのお雛様は凛とした姿が、可愛らしさよりも美しさや優雅さが引き立つ、少し大人っぽいお雛様となります。東玉でお取り扱いしている大垂髪のお雛様としては、以下のシリーズとなります。
一方「下げ髪」とは「割り毛」とも呼ばれ、平安時代の貴族達が用いていたもので、日本古来の髪型とされています。平安絵巻や源氏物語の中の女性に見られる髪型です。衣裳着の雛人形に一部使われていますが、気品ある髪型と評価されています。木目込みの雛人形の髪型には、昔からほとんどが「下げ髪」が用いられています。
こちらのお雛様はコロンとした温かみのあるフォルムのものが多く、表情もふっくらと優しく、可愛らしい印象のものが多いです。東玉でお取り扱いしている下げ髪のお雛様としては、以下のシリーズとなります。
雛人形の髪型の要「髪の毛」の素材
雛人形それぞれの顔の印象を考えた時、髪型や髪色の印象がかなり影響を及ぼしていると思われます。現在、主流の「大垂髪(おすべらかし)」や「下げ髪(割り毛)」の型もすべてが髪の毛一本、一本から成り立っています。この髪の毛はどんな素材で出来ているのでしょうか。
昔は本物の髪を使ったおひな様もあったようですが、今、使われているほとんどの素材は、「スが糸」と呼ばれる糸と「ナイロン糸」があります。「スガ糸」は蚕の繭から紡いだ絹糸を黒く染めた天然素材のもので、昔は多く使われていましたが値段の高騰などから、現在ではどちらかというと多少高額なおひな様に多く使われています。見た感じは、しっとりとした自然な風合いを感じさせます。
「ナイロン糸」はほとんどのおひな様で使われており、安価で量産が可能です。虫に食べられることなく、カビがつく恐れもありません。その仕上がりは光沢があり大変綺麗に目に映ります。
いずれにしても、素材の内容にこだわることも大事な事と思いますが、熟練した職人さんの造る「飾っていただくお客様のために」と言う気持ちは変わることのないものです。
雛人形の髪型を作り上げる匠の技法
雛人形の髪型を作り上げるためには、数多くの工程がありますがその中で「毛彫り」・「毛葺き」という作業があります。「毛彫り」は顔の頭の周り(生え際)に毛を植え込むための溝を彫る作業です。彫る溝がずれたりしない様に均一に仕上げます。
「毛葺き」は髪を平たく櫛でとかして先を切り揃えて整えることです。その先端にのりをつけ、毛彫りした溝の中に、のり付けした髪の先端を目打で植え込んで(抑え込む)いきます。次に、おすべらかしの型をあて、鏝(こて)や櫛を使い、乱れることなく綺麗に整えて行きます。
そして最後に結びまとめ、完成します。溝の彫り具合や髪の太さ、植え方など職人さんの長年の勘と技術で乱れる事のないように、優雅で気品ある髪型に仕上がります。その髪型は雛人形の美しいお顔の雰囲気を一層引き立ててくれるでしょう。
「大垂髪」のお雛様
- 優雅 親王飾り「彩左京」
大人が見ても納得の美しさが定評、雛人形作家・田村扶紗彦による優雅シリーズの逸品です。衣装の美しさに合わせたお顔は、熊倉聖祥原作の高級感溢れる人気のお顔です。全体をモダンで高級感ある雰囲気でコーディネートしました。
商品詳細
- 優雅 収納飾り「桜香織」
赤い布に金屏風を飾る昔ながらのおひなさまをアレンジ。刺繍を加えた屏風と掛け布ですっきりとお飾りいただけます。落ち着いた紺色の段織衣裳のお殿様とあでやかな赤い西陣織を着せ付けたお姫様。収納タイプのため、すっきりとしまえます。
商品詳細
「下げ髪」のお雛様
- 木目込人形 ゆかり 親王飾り「遊姫A」
まるでお花畑のなかでひな祭りをお祝いする。華やかでかわいらしい風景を表現したおひなさまです。花の冠をそえたお姫様は、春色の正絹衣裳を身にまとったこだわりの逸品です。リビングなど洋室にぴったりなひな飾りです。
- 木目込人形 ゆかり 親王飾り「遊姫A」
商品詳細
- 木目込人形 喜久絵 ケース入り 親王飾り「つむぎNT」
ピンク色のアクリルケースに固定されている喜久絵作『桜華雛』の人形は鮮やかな色合いでコンパクトサイズながら特別な存在感があります。雪洞の明かりがおひなさまを優しく照らします。
商品詳細
まとめ
雛人形を選ぶ際に、どうしてもお顔を重視して見て行くと思われますが、そのお顔を更に引き立てているのが髪型であると言えるでしょう。おひな様の特にお姫様の髪型について説明をしてきましたが、お殿様含め残りの十三人の人形達においても熟練した職人さん達の手によって、一つ一つ心を込めた手作りで仕上げられています。古来から伝わる技法により雛人形の髪型は、お顔の印象をより引き立てて行くように作り上げられます。十五人それぞれの髪型をじっくりとご覧ください。