15人の雛人形の持ち物の名前と意味とは?
3月3日は女の子のお節句、ひな祭りです。ひな祭りには雛人形を飾って、お子さまの健やかな成長を願います。すべてが揃っている雛人形と言えば、やはり7段飾りですね。大きくて大変豪華なお飾りです。最近では7段飾りを飾れるお宅が少なくなってきていると思います。しかし雛人形の季節が近づくと、保育園や幼稚園、ホテルのロビーなど、いろいろな場所でお目にかかることができます。
7段飾りのお雛様は、人形の数は15人が一般的です。それぞれのお人形はいろいろな持ち物を持っています。これらのお人形が持っている持ち物についてご紹介していきます。
雛人形の主役「お内裏様」の持ち物
雛人形7段飾りの一番上の段にいるのはお内裏様です。まずはお殿様の持ち物からご紹介していきましょう。
お殿様が右手に持っているものは笏(しゃく)といいます。平安時代以降の男性の正式な服装の事を束帯(そくたい)といいます。笏は束帯を着たときに手に持つ細長い板のことです。木でできたものや、象牙でできたものがありました。当初は公の行事の時に失敗がないように、式次第などを紙に書いて笏の裏側に貼って使っていたようです。つまりカンニングペーパーを貼る道具だったのですね。その後、威儀を整えるために使われるものとされました。
次に、お姫様が手に持っているものは檜扇(ひおうぎ)といいます。檜(ひのき)の薄い板で作った扇です。宮中で用いられたもので、もともとは男女ともに使っていたようです。殿の笏と一緒で宮中の行事の進行をメモをするためのものだったようです。特に女性が使用するものは、きれいに色づけされ、いろいろな色の糸を両端から長く垂らしたものでした。後の紙製の扇子はここから生まれたと言われています。女性用の檜扇は、礼儀として顔を隠すために使っていました。宮中では女性が人前で顔を見せることは、良くないこととされていたからです。
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二段目の雛人形「三人官女」の持ち物
三人官女は宮中でのお殿様とお姫様の身のまわりの世話が役目でした。
向かって右の官女が持っているものは「長柄(ながえ)の銚子」、左の官女が持っているものが「加えの銚子」、真ん中で座っている官女が持っているものが「三方(さんぽう)」または「島台(しまだい)」です。
最初に「長柄の銚子」です。銚子はお酒を注ぐための道具です。文字通り長い柄のついた銚子です。昔から銚子というとこれを指していました。宮中の酒宴や結婚式の三三九度など、正式な儀式のときに使われるものです。
次に「加えの銚子」です。これは本来「提子(ひさげ)」と呼ばれる上に持ち手がついている道具でした。長柄の銚子にお酒を補充する(加える)ことから加えの銚子と呼ばれました。江戸時代以降からはこれを使って直接器に注ぐようになりました。
次に「三方」です。神様にお供え物をするときなどに使う道具です。檜などで作られ「三宝」と書く場合もあります。三人官女の持ち物の場合は、盃が乗っているものがつかわれます。
「島台」を持つ座り官女もいます。お祝いの飾り物が島台です。州浜形(海に突き出した小さな半島)におめでたい松竹梅や鶴亀などを飾ったものです。一般的には三宝は関東風、島台は関西風に使われることが多いようです。
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三段目の雛人形「五人囃子」の持ち物
一番右の人形は謡い(うたい)と言って持ち物は扇です。謡う時に右手に持ち構えて謡います。
右から二人目は笛です。五人囃子の中の楽器では、唯一のメロディ担当です。
真ん中の人形の持ち物は小鼓(こつづみ)です。左手で持ち右肩に乗せ、右手でたたいて演奏します。
左から二番目の人形の持ち物は大鼓(おおかわ)です。左手で持ち左ひざに置き、右手でたたいて演奏します。
一番左の人形は太鼓をたたいています。太鼓はバチを使ってたたきます。宮中で行事の時などに音楽を奏でる役目でした。
雛人形における五人囃子の飾る位置は、一般に向かって左側から 太鼓→大鼓(おおかわ)→小鼓(こづつみ)→笛→謡(うたい) というように、音が強く大きな順に配置するといわれています。衣裳は、元服前の少年たちの「袴姿」で頭には「侍烏帽子」といわれる三角形の尖った帽子をかぶります。
四段目の雛人形「随身(随臣)」の持ち物
随身は宮中で護衛をしていた人です。今で言うボディガードです。随身の人形は左右に一人ずつ飾ります。向かって右が白いひげが生えた黒い衣裳の年配者を、左には朱の衣裳を着た若者の人形を飾ります。二人とも持ち物は共通で、腰に刀を差し、背中に背負い矢、右手に矢羽、左手に弓を持たせます。
五段目の雛人形「仕丁」の持ち物
三人仕丁は宮中の雑役係でした。三人官女と同じく、関東風と関西風で違います。
関西風は右から箒、ちりとり、熊手です。関東風は右から立傘(雨傘)、沓台(靴を置く台)、台傘(日傘)です。
雛人形は分業で作られています。お顔の部分を作るのは頭(かしら)師さんです。お顔を描く人は面相師さん、髪の毛を結う人は結髪師さんと呼ばれます。体の部分を作る職人さんは着せつけ師さん、お人形の手足を作る手足職人さん、持ち物を作る小道具職人さん。雛人形は完成するまでにいろいろな種類の、何人もの職人さんがかかわっています。その他にも台や屏風、ぼんぼりや菱餅など、お道具を作る職人さんもいます。お道具に絵を描く蒔絵師さんもいます。それぞれの分野でそれを最も得意としている、職人さんたちの技が集まって、一つのセットになっているのが雛人形です。
ご紹介してきた雛人形の持ち物も、じっくりご覧になってみてください。こんなに小さなものでも、職人さんが丹精込めて一つ一つ手作りで、作り上げていることに、きっと驚かれることでしょう。
また雛人形にも嫁入り道具を持たせることで、嫁入り道中での事故や災難から花嫁を守ってくれると考えられていたのです。様々な持ち物を飾るときに持たせたり飾ることで、楽しみが増えますね。