雛人形を並べながらお子さんへ伝える15人のストーリー
雛人形を飾る、特に7段15人飾り(雛人形のフルセット)を飾るのは、時間と手間はかかりますが、飾り終えた達成感と豪華な雛人形の完成を見て感じるひな祭りの季節感、更にお子様の誇りも一層増すことでしょう。
15人飾りは、お殿様お姫様の結婚式の様子を表しているといわれます。そのため七段飾りに飾られているものは、一番下の段はお出かけ用のお駕籠(おかご)、御所車(牛車)と重箱が飾られ、下から二段目にはお姫様の嫁入り道具、たんす、長持、鏡台などが並んでいます。
人形もお屋敷の主要な人々、殿、姫、女官(3人官女)、おはやしを奏でる五人囃子、随臣、三人仕丁が並びます。一人台がつく場合は、人形の下に敷いて下さい。このお屋敷の組織図ともいえる7段15人飾りは、江戸時代に平安文化へのあこがれとともに、厄を祓う『ひとがた』に始まったものですが、豪華な衣裳をまとった人形たちときらびやかな細工のされたお道具の数々が、女の子の幸せな人生を願う気持ちや、豊かな生活への憧れが込められています。
お内裏様の並べ方
7段飾りの雛人形は、まず段の組み立てから始まります。
主にスチールの骨組みを組立て、階段状になった骨組みの上に横長の鉄板を置き棚を作るのが一般的ですが、木製の組み立て式の段もあります。
ここでは赤い毛氈をかけるスチール段の飾り方の手順を説明します。
7段用毛氈を組み立てたひな段に毛氈の中心を合わせ、下から上に階段状の段の形状に合わせながらピンでとめていきます。
毛氈をかけ終わったら、人形と道具を保護するため、白手袋(布製の手袋)をつけ、一番上の段から、屏風、雪洞、親王台を飾り、2段目から下段へと一人台を並べます。(一人台のないものもあります)
次に、人形を置く前に、先に嫁入り道具、桜橘などを飾ります。
人形に小道具を付け終えたら、7段の一番上の段の親王台の上に飾ります。向かって左に男雛、向って右に女雛を飾ります。古式を大事にする京都の雛人形では、男雛、女雛左右逆の飾り方になります。
男雛
一番上の段にお内裏様(男雛・女雛)を飾ります。
1. 男雛の右手の親指と人差し指の間に笏(しゃく)を差し込みます。
2. 太刀は男雛の左腰と袖の間に差し込みます(紐がついている場合は胴に回して結びます)。
3. 冠を男雛の頭に乗せ、あごひもを結びます(人形と道具保護の白手袋はこの時は外した方がうまく結べます。但し、人形のお顔に触れないように注意して下さい)。
4. 纓(えい)を冠の後側面の穴に差し込みます。纓は角のある面が向かって左側に来ます。
女雛
1. 檜扇(ひおうぎ)は絵が描いてある面を表にして、広げて女雛の両手に持たせます。
持ちにくい場合は、扇を少し閉じたり、手首をまわしたり腕を動かして調節します。
シーン「内裏雛を並べる」
子「あれっ、このお姫様、まゆ毛の上に黒い丸がかいてある!へんなのーっ」
親「本当ね、お殿様はどう?」
子「お殿様もまゆ毛の上に黒い丸がある、なんで?」
親「お姫様とお殿様のまゆ毛の上の黒い丸は『くらいぼし』っていうお化粧よ。お雛様の昔に流行したお化粧みたいよ。」
子「へんなのーっ。でもお殿様もお化粧してるの?」
親「そうよ、だからお殿様の顔も真っ白で女の子みたいね」
三人官女
上から2段目に三人官女を飾ります。
加えの銚子、立官女
まず小道具を持たせます。
三人官女のうち、向って左側に飾るのは、立官女の「加えの銚子」(柄のない銚子)を右手に持つ官女になります。
見分け方は、左手のひらが開いている方の官女です。
座官女
真ん中には、三方を両手の間にはさんで持たせ、座官女を飾ります(三方が嶋台に代わるタイプもあります)。
長柄の銚子、立官女
向かって右側に、左手を握っている立官女に長柄銚子(柄のついている銚子)を右手側に銚子の部分が来るように両手で持たせて飾ります。
うまく持たない時は手首をやさしく回したり、腕の角度を調節して持たせて下さい。
シーン「三人官女を並べる」
親「このお姉さんたちは同じ服を着ているでしょ?お顔も同じかな?」
子「同じ!」
親「そうかなー?よく見て●●ちゃん、このお姉さんだけ眉毛がないでしょ」
子「ほんとだ、なんで?」
親「それはね、お雛様の昔は、お嫁に行ったら眉毛を剃らなくちゃいけなかったんですって」
子「えー、いやだなーっ、お母さんは眉毛を剃らないでね」
五人囃子の並べ方
上から3段目に五人囃子を飾ります。
向かって左から 太鼓(たいこ)、大皮(おおかわ)、小鼓(こつづみ)、笛(ふえ)、謡(うたい)の順に飾ります。
小道具を取り付けます。脇差はそれぞれ五人囃子の左腰に差し込みます。
それぞれの人形に烏帽子(えぼし)をかぶせます(烏帽子はゴムで固定するものと、ひもを結んで固定するタイプのものがあります)。
太鼓
太鼓の人形の左右の手にバチを持たせます。太鼓は台に乗せ人形の前に置きます。
大皮
大皮の人形には、鼓面に柄の入っていない鼓の、胴ひもを人形の左手にひっかけて持たせます。
小鼓
小鼓の人形には鼓面に柄の入っている鼓を、人形の右肩の上に乗せます。
笛
笛の人形に、横笛を両手の指の間に差し込むように持たせます。
持たせにくい場合は、手首や腕を動かして調整して下さい。
謡
謡の人形の右手に扇を持たせます。扇の芯材の見える面を表にします。
シーン「五人囃子を並べる」
親「●●ちゃん、五人囃子はどの子の顔が好き?」
子「いちばん右の子、お口をあけていてかわいい」
親「じゃあ、いちばん嫌いなのは?」
子「いちばん左の子、お口がへの字になっていて、いじめっ子みたい」
親「そうね、いちばん左の子は太鼓をたたくから一所懸命なお顔をしているものね」
子「ほんとだ、木の棒で太鼓をたたくからたいへんなのね」
親「そうよ、五人囃子はみんな一所懸命、音を出しているのね」
子「じゃあ、いちばん右の子は」
親「お口を開けてうたをうたっているのよ」
子「おもしろーい」
随臣の並べ方
上から4段目の段の両端に随臣を飾ります。
配置は、向かって左側に若いお顔の人形、右側に白いひげのある老人の人形を飾ります。ます小道具を取り付けます。
1.随臣用の冠をかぶせ緌(おいかけ)のついたひもを結び固定します(ひもがゴムのものもあります)。緌が人形の頬の横に来るように調整します。冠の後側の穴に巻纓(けんえい)を差し込みます。
2. 太刀は左の腰と袖の間に差し込みます(ひもがついている場合は、胴に回して結びます)。
3. 持矢は羽根の方を下にして右手に持たせます。弓は左手に持たせます。
4. 背矢は背中の帯に差し込みます。向かって右の肩から矢先が見えるように調整します(ひもつきの背矢は、胴に回して結びます)。随臣は持ち道具が多いため、手首や腕を動かして見栄え良く小道具を持てるように調整して下さい。
シーン「随臣を並べる」
子「随臣って何をする人なの」
親「お屋敷の外を見張っていて、悪い人が入ってこないようにする人よ」
子「随臣って何で片方おじいちゃんなの?」
親「きっと頭のいい人で、他の見張りの人にいろいろ教えてくれるからだと思うわ」
子「じゃあこっちの若い人は?」
親「いちばん力持ちの人かなぁ」
仕丁の並べ方
上から5段目に三人仕丁を飾ります。
配置は向かって左から怒り顔の仕丁、泣き顏の仕丁、笑い顏の仕丁です。
小道具を取り付けます。烏帽子を3人の仕丁にかぶせ、あごひもで固定します(あごひもがゴムのタイプもあります)。烏帽子は滑りやすいので、他の人に押さえてもらいひもを結ぶと固定しやすいです。
台傘
台笠(だいがさ※小道具の上部が平たい方)を右手を上げている怒りの顏の仕丁の手に差し込むように持たせます。
沓台
沓台(くつだい)は泣き顔の仕丁の両手にはさむように持たせます。
台上の沓のつま先が人形に向く方向で持たせて下さい。
立傘
立傘(たちがさ※小道具の上部が棒状のもの)を左手を上げている笑い顏の仕丁の手に差し込むように持たせます。
三人仕丁が京風のセットの場合、飾る配置、持ち物、烏帽子の形状も変わります。
その場合の人形の配置は、向かって左から、泣き顔の仕丁、怒り顔の仕丁、笑い顔の仕丁の順に並べます。
・烏帽子はかぶらず、首からうしろにぶら下げるようにしてかけます。
・小道具の熊手(くまで)は泣き顔の仕丁の前、ちりとりは怒り顔の仕丁の前、ほうきは笑い顔の仕丁の前にそれぞれ置きます。
シーン「三人仕丁を並べる」
子「いちばん左の人、怒っているね、顔が真っ赤。真ん中の人は泣いているし、右の人は笑っているね」
親「右の人は、とっても良い事があったのね」
子「なんでこの3人だけ怒ったり泣いたりしているの?」
親「三人仕丁さんといって、お庭のそうじとか、お出かけのお供をする人だけど、とってもお仕事がたいへんで怒ったり泣いたりしているんだと思うわ」
子「官女さんは怒ったり泣いたりしないの?」
親「官女さんはお姫様と一緒の時は怒ったり泣いたりしないようにしているんじゃない?」
お道具の並べ方
最後に一般的なお道具の配置です。
1. 七段飾りの一番上の段、男雛、女雛の乗った親王台の真ん中に、三方飾りを置きます。
2. 上から2番目の段、三人官女の間に一対の高坏(たかつき)と丸餅を置きます。
3. 上から3番目の段、向かって左から、太鼓(たいこ)、大皮(おおかわ)、小鼓(こつづみ)、笛(ふえ)、謡(うたい)の順に五人囃子を置きます。
4. 上から4番目の段、真ん中に一対の菱台と菱餅、その左右にお膳を置きます。菱台とお膳は左右端の随臣にはさまれる形になります。
5. 上から5番目の段、向かって右端に桜、左端に橘を置きます。三人仕丁は桜と橘にはさまれる形になります。
6. 下から2番目の段には嫁入り道具が並びます。
向かって左から箪笥(たんす)、長持(ながもち)、鏡台(きょうだい)、針箱(はりばこ)、火鉢(ひばち)、衣裳袋(いしょうぶくろ)、茶道具(ちゃどうぐ)の順に並べます。
7. 一番下の段には、向かって左からお駕籠(おかご)、重箱(じゅうばこ)、御所車(ごしょぐるま)の順で飾ります。7段15人飾りは、箱、部品がたいへん多い雛人形です。初節句で飾る時に、それぞれの箱から、人形、お道具を取り出す前に収納状態を写真に残しておくことをお勧めします。
7段15人飾りは、大きさ豪華さともひな祭りを最高の思い出に出来る雛人形です。もちろん飾るスペース、保管しておく場所など制約は多いですが、お子様の自慢の雛人形になることは間違いありません。
7段15人飾りを飾りたいけどスペースの確保が難しい場合が多いです。
そんな場合は3段飾りがオススメです。親王と三人官女の5人飾りになります。
東玉の3段飾りを一部ご紹介します。
- 三段飾り「彩花」:格子をアクセントとした屏風と段の桜の模様は刺繍仕立てです。
- 三段飾り「紫香」:三段飾り・東玉総本店人気No.1セット『紫香』。側板を組み換えることにより一段でも、二段でも、三段でもお飾りいただける、東玉オリジナル「一、二の三段」です。お殿さま、お姫さまには段織りの衣裳を使用し、高級感あるつくりになっております。屏風と段の、桜の模様は駿河蒔絵で描かれております。
- 優雅 三段飾り「彩優雅」:定番の緋毛氈の三段を現代風の色合いにアレンジ。新しい色合いのひな飾りが桃の節句をいっそう華やかに彩ります。
商品詳細
東玉の3段飾りはこちら「多人数飾り」
三段飾りでも、お内裏雛・三人官女までは、七段飾りと変わりありません。最近では省スペース化もあり、三段飾りも収納型があります。スマートに箱の中にお人形や道具類がしまえ、ある程度小さく収まります。色々なタイプのお雛さまがありますので楽しみながら探してみてはいかがですか。お子さまとの会話を楽しみながら、その他の言い伝えや、伝統的な事を教えてあげてください。そして、にこやかに、楽しい”ひなまつり”を迎えて下さい。