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岩槻総本店
〒339-0057
埼玉県さいたま市岩槻区本町1-3
雛人形には色々な飾り方があります。
五段や七段の飾り方では、飾られる人形は全部で15体です。
ただ近年の住宅事情により、三段以下の雛壇飾りが多くなってきています。
ひな祭り=上巳の日=桃の節句とも呼ばれ、女の子の健やかな成長や幸せを願う古くから伝わる伝統行事です。
女の子のいる家庭では雛人形や桃の花を飾り、ちらし寿司やハマグリのお吸い物、白酒を用意してお祝いします。
雛壇には「お内裏様(おだいりさま)」を初めとする数多くの雛人形とたくさんの雛道具が飾られます。
この雛壇飾りは、平安貴族の婚礼の様子を模していると言われます。
お内裏様が「新郎新婦」、雛道具は「お姫様の嫁入り道具」ということなんですね。
最近では小さいショーケースの中に「お内裏様」だけが並んでいる雛飾りもありますが、雛壇という名が示すように本来は七段が基本の飾り方でした。
みなさんは、各段に並べられる人形達の正しい呼び方や役割、そして飾り方をご存知でしょうか?
まず雛壇飾りの最上段には、新郎新婦である「お内裏様(おだいりさま)」を飾ります。関東雛は向かって左にお殿様を、京雛は向かって右にお殿様を飾ります。古くは日本では「東」上位・左側が上座(かみざ)とされてきました。太陽の昇る東側が左「陽」、西側を右「陰」とする陰陽道によるところもあったようです。その後、昭和天皇即位の儀式の折に、京都御所の紫宸殿に向かって天皇の高御座が向かって左に、向かって右に皇后の御帳台が置かれたことにより、雛人形もこれにならったものが現在多く目にする飾り方です。これをふまえ関東雛の飾り方でご説明してゆきます。
最上段の向かって左側に飾る飾り方です。
お姫様の隣で、冠をかぶって右手に笏(しゃく)を持ち、左脇に太刀(たち)を差して座っている人形は、新郎役である「男雛(おびな)」です。
男雛は天皇をあらわしているので「親王(しんのう)」とも呼ばれます。
大抵の人はこの男雛のことを「お内裏様」と呼びますが、実はこれは間違いです。
内裏(だいり)というのは、天皇の私的区域の名称です。
内裏の中には「紫宸殿(ししんでん)」と呼ばれる正殿があり、そこでは天皇の元服や立太子礼などの儀式が行われていました。
雛人形飾りは、その紫宸殿で行われた「天皇と皇后の結婚の儀」がもとになっています。ですから正確には、お内裏様というのは「男雛(天皇)と女雛(皇后)」の両者を指す言葉なのです。
天皇皇后のご婚礼を理想とし、雛壇を飾って娘さんが皇后様のように良縁に恵まれることを願うのが「ひな祭り」なんですね。
最上段の向かって右側に飾る飾り方です。
黒々と結った髪が美しいお姫様は、俗称「十二単(じゅうにひとえ)」と呼ばれる豪華な装束を身にまとい、広げた「檜扇(ひおうぎ)」を両手で持っています。お姫様が身につけた装束は、正式には「五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも)」と言います。
ひな祭りの主役である新婦「お姫様」ですが、こちらも正式名称は「女雛(めびな)」です。前述のように、女雛は皇后様をあらわしています。
女雛のことも、つい「お雛様」と呼んでしまう方が多いと思いますが、こちらも間違いになります。
お雛様の「雛」という言葉は、平安時代に貴族の子供たちの間ではやっていた「雛(ひいな)遊び」からきています。「ひいな」は「小さくてかわいらしい」という意味で、「ひいな遊び」は紙で作った人形で遊ぶ「おままごと」でした。
つまり「雛」はミニチュアのことですから、「お雛様」は雛壇に飾られた「全ての人形」を指す言葉なんです。
男雛と女雛の下の段には、三体の女性の人形が並んでいます。
彼女たちの役割と飾り方も見てみましょう。
この三体の女性の人形のことは「三人官女(さんにんかんじょ)」と言います。
彼女たちは、新婦であるお姫様のお世話をする侍女を表しています。
官女というのは、天皇皇后の住む宮中に仕える女官のことです。
この官女三人の扱いは同じではなく、一人だけ既婚者(もしくは身分が高い)の官女がいます。ちなみにどの官女かというと、中央の官女だけ眉毛がなくお歯黒の容姿をしていることがありますが、これは彼女が既婚者であることのしるしです。つまり、眉毛があり口の中も黒くない両端の官女は未婚の女性であることがわかります。
眉なしお歯黒の人形がいたらそれが既婚者ですが、そうでない場合は一人だけ三方(さんぽう)を持って座っている人形(まれに逆)を、最も身分が高い官女として中央に飾ります。
なお、京都風の人形は三方の代わりに「島台(しまだい)」を持っています。
残りの二人の未婚官女は、向かって右の官女が白酒を注ぐ「長柄銚子(ながえのちょうし)」、左が「加銚子(くわえのちょうし))」を手に持っています。加銚子とは、提子(ひさげ)とも呼ばれる酒器で、これで長柄銚子にお酒を注ぎ足します。
三段目にいるのは、結婚の宴を盛り上げてくれる「五人囃子(ごにんばやし)」です。
五人囃子は、宮中で楽器を演奏するのが役割の人たちでした。
元服(げんぷく)前の貴族の若者がなったので、五人囃子はあどけない顔の人形で構成されています。
毎年お雛様を箱から出して飾る時に、五人囃子の飾り方が分からなくなったというのはよくある話ですが、この問題は手にした楽器をよく見れば解決します。
関東では、この段に能楽の地謡1人と囃子方4人を並べるのですが、この地謡とは能の舞にそえられる歌と歌い手のことです。
まず、楽器を持たない謡い(うたい)は、向かって一番右側に飾ります。
そこから左に向かって順に、横笛(よこぶえ)・小鼓(こつづみ)・大鼓(おおつづみ)・太鼓(たいこ)と並べます。
つまり、左へ行くほど音の大きい楽器になってゆくと覚えておきましょう。
四段目に飾るのは、右大臣・左大臣(うだいじん・さだいじん)なのですが、実はこちらの呼び方も俗称です。
この段に並べられるのは一対の「随臣(ずいしん)」です。
隋身はお殿様のお供をするのが仕事でしたが、時には殿の恋の橋渡しなどの役目もこなしていたようです。
とはいえ、随臣の本来の役割は宮廷の警護なので、雛壇でお内裏様をお守りしている人形も「武官束帯」を着用しています。
しかし、右大臣・左大臣というのは「公卿(くぎょう)」のことを指します。
公卿は国の政治を担っていた高い職位ですから、武官束帯を着用しているのはちょっとおかしいのです。
ただ雛飾りでは右大臣・左大臣という呼び名が定着しているということと、随臣と呼ぶと左右どちらか分からないという理由で、どちらの呼び方でも構わないとされています。
少しややこしいのですが、こちらから向かって右側にいるのが左大臣です。
なぜなら雛壇での左右は、お内裏様から向かって見たものだからです。
老人の姿であらわされた左大臣は、学問と知性の持ち主です。
反対に、向かって左側にいるのが右大臣です。
こちらは力を司っているので、若者の姿をしています。
もともと朝廷では左側が上位でした。
ですから、お内裏様から見て左側にいる年配者の姿の左大臣が上位で、それより格下の右大臣は若者の姿であらわされているのです。
両者ともお内裏様をお守りするために腰に剣、左手に弓、右手に矢を持ち、背には矢を入れた「胡簶(やなぐい)」を背負っています。このため「矢大臣(やだいじん)」という俗称でも呼ばれます。
最後に、あまり耳慣れないかもしれませんが、五段飾りの場合の最下段にいる豊かな表情の三人は、「仕丁(じちょう)」と言います。
仕丁は、宮中や貴族の家に仕えていた雑用係のようなものです。
雛壇の中で一番庶民に近い存在で、泣き、笑い、怒りという三つの表情で作られていることが多いので「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれます。
外出時の従者役から身の回りの世話まで担っていたので、その手には熊手、ほうき、靴を持っています。台笠(だいがさ)、沓台(くつだい)、立傘(たてがさ)、ちりとり等を手にしている場合もあります。
仕丁の飾り方には諸説あり、三人上戸の並べ方や手にしたものは、人形が作られた地域や時代によってかなり異なるようです。
雛飾りの五段目に三人上戸を飾るのは、お子さんに「表情豊かな子に育って欲しい」という親の願いが込められているからです。
各段のお雛様の飾り方は覚えられたでしょうか?
ひとつひとつの人形の呼び名やその由来、雛壇における役割をきちんと知っておけば、お雛様を飾る位置や手に持たせるものにもあまり悩まなくなると思います。
少なくとも、今まで勘違いしていた「お内裏様」「お雛様」という名称の本来の使い方はご理解いただけましたかと思います。
ぜひ周りの方にも、雛人形の正しい呼び方を教えてあげてください。
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